母なる大地に抱かれて


「最近、気になることがあるんだ」
「あそこ、ほら、アオサギが何羽もいるのが見えるだろ、田んぼの真ん中」
「あ、あれアオサギなんだ。うん、七、八羽はいるな」
「そう、しかも一箇所に固まってる。あれ、どう思う?」
「どう、って?」
「あれさ、ここのところ毎日のように、同じ場所に何羽も集まって来るんだ」
「ほう」
「この季節、水も張ってない田んぼに、しかもいつも同じ地点に何羽も集まってくるなんて、あそこに何かあるとしか思えないだろう?」
「何かって、何があると思うの?」
「さあ、僕は鳥の生態に詳しくないからはっきりとは言えないけど、何か食べ物でもあるのかな、と」
「まあ、土の中には冬眠してる小動物もいるんだろうけど。それでもあの一箇所に固まって?何羽もが何日も食べ続けても無くならないほど?この季節に?」
「……うーん、食べ物じゃあないのかも。じゃあ何があそこにあるのかなあ」
「まあ、実際鳥が集まってきているんだから、確かにあそこに何か鳥の気を引くようなものが埋まってるのかもね」
「よその田んぼだから勝手に入ったり掘り起こすわけにもいかないし。……何だか気になるなあ」
「そんなに気になる?」
「うん、何故だか無性に気になる」
「そこまで言うなら教えてあげてもいいかな。実は理由を知ってるんだ」
「え!?何で」
「いや、実はあそこにあるものを埋めたんだ」
「何を」
「……魔法少女
「ま、」
「何かさ、一週間くらい前に魔法少女に襲われてさ。返り討ちにして縛り上げた上あそこに埋めてやった」
「な、こ、殺したのか」
「いや、気は失ってたけど殺してない。埋めてからもどうやら魔法の力で生きてるみたいで、でも縛り上げたもんだから自力では出て来れないみたいでさ。近くの生き物を何とか魔法で操って掘り起こさせようとしてるんだな、あれは。
「でも近くにいた中で一番大きかったのがアオサギだったんだろうが、あれじゃあ大した穴も掘れないよな。数だけは少し集めてるみたいだけど。犬でも通りかかればいいんだろうけど、生憎ついこの前保健所が野良犬狩りしてたから、しばらくこの界隈に野良犬はいないだろうし。あの調子だと出てくるまでまだまだかかるかな。しかも昨夜ちょっと埋め戻したし」
「埋め戻すなよ!……じゃあない、何だよ魔法少女って。もうちょっとマシな嘘吐けよ。しかも何で埋めるんだよ」
「いや、埋めておけば新しいのが生えてくるかな、と。それに嘘じゃないって。何なら掘り返しに行ってみる?」


埋まってた。