吉村昭『羆嵐』

萌えとか何とか言っても、大自然の前には無力です。
この作品に出てくる羆は果てしなく危険。
ひょっとすると北海道の人にとってはそんなの当たり前なのかもしれませんが。
まずこの羆、人をホイホイ襲う。
熊のほうも人が恐ろしい、という話を聞いたことがあるが、この話の羆はそんなことは全くない。
むしろ好んで人を襲う。
しかも肉の柔らかい女、子供のみを狙う。
明治初期の開拓民の建てた小屋の壁などものともしない。
鉄砲の存在を鋭く感知すると巧妙に姿を晦ます。
まさに悪魔。
いちばんアレな台詞は「おっかあが、少しになっている」。