第4番 ツンデレを見た人

ある雑誌記者から聞いた話である。


取材で東北地方に行った時、歩いていろいろなところを巡っているうちに、ひとつの小さな村に行きついた。
簡素な村なのだが、しばらく行くと、手に手に竹竿や鍬などを持った十数人の村人がひとかたまりになって上の方を指さしたりして、わいわい騒いでいる。中にはほうきを持ったおばあさんや、猟銃を持ったじいさんまでいる。
「あのう、どうかしたのですか?」
なにが行われているかさっぱりわからず、村人たちに聞いてみる。
「あすこのな、電線にな、さっきまでツンデレがとまっとったんじゃ」
ツンデレ?なんですか、それ」
「あんた、知らんのけ、ツンツンしてデレデレするあのツンデレじゃ」
「みなで捕まえようとしたんじゃ、んだども逃げられた」
やがて村人たちは、わいわい言いながらそれぞれの仕事に戻ったという。


(元ネタ:『新耳袋』第一夜 第六十七話「天狗を見た人」)