第3番 のびあがり

仕事でとある山村に出かけたときのことである。
日中、田舎道を歩いていると向こうからセーラー服姿の女子学生が歩いてきた。
いまどき街中では珍しくなった黒髪ストレートが似合う少女である。
目を引かれて距離が遠いうちから見とれていると、何だか距離感覚が狂った気がした。
風景がどんどん縮んでいくように見える。
しかし一瞬あとにそうではないことに気が付いた。
少女のほうがどんどん大きくなっているのだ。
すでに少女は見上げるような大きさになっている。
そればかりか、見上げれば見上げるほど大きくなってゆく。
あまりのことに、どうしていいかわからない。
このまま見ていてはいけない。
とにかくそう思って視線を下に向けようとしたとき、ふっと意識が途切れた。


気が付くと道端に倒れていて、あたりには誰もいなかった。
時計の針はほんの10分ほどしか進んでいなかった。