2023-01-01から1ヶ月間の記事一覧

納屋

消防団に所属しているSさんが、市内の火災に出動したときのこと。燃えていたのは農家の納屋だった。古い木造のためか激しく燃え上がり、Sさんたちが到着した時には既に二階の屋根から炎が吹き上げていた。早速消防署のポンプ車と並んで消火作業に取り掛かっ…

プレゼント

Wさんは大学を出て地元の信用金庫に就職した。入ってから知ったのだが、慢性的に人手不足らしく、常に忙しい。外回りに事務の数々と、新人のうちから回される仕事が多かった。休日のはずの土日も、付き合いのある地元企業との会合が入ることが多く、休めない…

怖い絵

高校の美術部で顧問をしている教師のKさんの話。その美術部には怖い絵の噂が代々伝えられていた。十年以上前、Kさんがその高校に着任するよりもっと前のことだという。部活動中、ひとりの部員が描いたスケッチが妙に怖い。他の部員たちがひと目見て顔を覆っ…

洞穴の絵

Sさんの家には階段を下りた突き当りに油絵が飾られていた。ぼんやりした色合いの風景画で、木々の間に見える岩壁に洞穴がひとつ、黒々と口を開けている。父の祖父、つまりSさんの曽祖父が買ったものだという。物心付いた頃からSさんはこの絵が怖かった。特に…