2014-01-01から1年間の記事一覧

無花果

Iさんという人が庭に植えてあったイチジクの木を根こそぎ抜いてしまった。 毎年実をつけていて、家人も気に入っている木だったのだが、なぜ突然抜いてしまったのか。 それはこんなことがあったためだという。 ある晩、Iさんが仕事から帰ってくると家の前に誰…

月曜日から発熱して水曜日までずっと熱が下がらず寝込んでおりました。体温が39℃を超えたので流石にこれはまずかろうと思い医者にかかったところ、化膿性扁桃炎と診断されました。すぐにコウセイ・ブシツをテンテキしてもらったところ、折しも外は激しい雷雨…

日めくり

Eさんが寝ていると、部屋の中が何やらざわついている。 壁を手で叩いて回ったり、裸足でペタペタ歩きまわる音がする。 なんだ、泥棒か、変質者か!?と暗い中で目を凝らしてみるものの、窓から差し込む街灯の光にぼんやり照らされた部屋には、Eさん以外誰の…

体調崩してここ三日間寝込んでいるので快復したら何か書きます。

タクシー

Fさんが休日に妻と外食をした帰り道のこと。 駅から自宅までの途中に大きなお寺があり、道に沿って長い土塀が続いている。 二人でそこを歩いていたところ、前方の土塀が途切れた角から一台のタクシーが出てきて、Fさんたちと同じ進行方向へと走り去った。 日…

救急車

千葉市に住むTさんの話。 自室で寝ていると、救急車のサイレンの音で目が覚めた。 部屋の中はまだ真っ暗で、時計に目をやるとまだ二時過ぎくらい。 すぐに寝直そうと目を閉じたものの、だんだん近づいてくるらしいサイレンが耳について寝付けない。 サイレン…

机の整理をしていたら十三年くらい前に300円くらいで買った肥後浮丸、いわゆる肥後ナイフが出てきたのだけれど、ずっと触っていなかったので刃の至る所に錆が浮いてしまっていた。折角だから研いでやろうと思って刃物の研ぎ方を検索したところ、肥後守のよう…

木箱

Uさんが就職に伴い上京して一人暮らしをしていたときの話。 日曜日の昼下がり、アパートの二階のUさんの部屋を誰かがノックした。 出てみると宅配便で、届いた荷物は一抱えもある木箱だった。周りを荒縄で十字に縛ってある。 そんなものを送られる心当たりは…

赤いジャージ

Kさんが当時付き合っていた女性と初めてデートに行った帰り道のこと。 食事をしてから夜景で有名な高台の公園に寄ったので、帰る頃にはもう夜10時を回っていた。 車で彼女を送っていく途中、市内の川にかかる橋にさしかかった。 その橋には平行して歩行者用…

撮り溜めたまま放置してあった『幻影ヲ駆ケル太陽』を消化中。重苦しい展開すぎて毎回登場人物がどんどん曇っていくのがだんだん面白くなってきたところです。 主人公の太陽あかりさんが戦闘モードになると髪の毛がバーッと伸びるのは獣の槍的なインシデント…

雛人形

二十年近く前のこと。 Uさんが通っていた中学校で、一斉に校内の鏡が外された。 それにはこういう経緯があったのだという。 ある朝、野球部の練習で早く来た生徒が昇降口を通りかかった時に、奇妙なものに気がついた。 昇降口の壁には、一枚の鏡がかかってい…

白い棒

大学生のTさんが友人たちと一緒に九十九里へ遊びに行った帰り道での話。 運転免許を持っているのがTさんだけだったので、レンタカーの運転手は行き帰りともTさんが担当した。 帰る頃にはもう夜九時を回っていて、友人たちは海で遊び疲れたせいで眠り込んでし…

記念写真

二十年近く前のことである。 Hさんが通っていた中学校は、生徒数の減少のため、Hさんたちの卒業を最後に廃校になった。 母校がなくなってしまうことを惜しんで、Hさんは卒業式の日に友人たちと校内のあちこちで写真を撮った。 撮った写真は春休み中に友達同…

5月5日は何の日?第十八回文学フリマの日だよぉ!(子日) 先回に引き続き、今回もサークル「たびね町」の新刊『十一月荘』第5号に寄稿いたしました。題は「ジャックの灯(ともしび)」でございます。前号同様に挿絵が美麗です。席番は「F-04」らしいので御…

車の中

Mさんが仕事中、外から戻ってきた同僚にこう言われた。 「車で子どもが待ってるみたいだけど、どうかしたの?」 そう言われても何のことなのか見当がつかない。 Mさんは独身で子どもなどいないし、車の中に誰かを待たせているということもない。 詳しく話を…

コンビニ

名古屋で働くKさんが法事のために長野の実家に帰ることになった。 その日の仕事を終わらせてから出発したので、長野県に入ったのはもうすっかり夜が更けてからのことだった。 山道を運転しているうちにトイレに行きたくなってきたので、どこかちょうどいい所…

座敷電車

東京で就職したMさんは、半年ぶりに帰省することにして、電車に乗った。 三回ほど乗り換えて四時間はかかる道のりだ。 郷里は人の少ない田舎なので、近づいてゆくうちに乗客もまばらになってくる。 しかし午後六時を過ぎた頃、二、三人くらいしか乗っていな…

十年ぶりくらいに見かけた同級生がアジア人のはずなのにスティーヴ・ブシェミとマコーレ・カルキンの平均値のような顔になっていたのでひどく感心してしまいましたが、特にそれとは関係なく怪談は明日更新します

笛の音

雨の日のことだったという。 Tさんが小学校から帰ってきてから居間で過ごしていると、後から帰ってきた中学生のお姉さんが辺りを見回してさかんに首を捻っている。 「なんか、笛の音がする」 お姉さんの言葉にTさんも聞き耳を立ててみると、かすかながらも確…

ぶら下がり

夜七時くらいのことだったという。 自宅のマンションに帰ってきてエレベーターに乗った。 他には誰も乗っていなかったし、五階で降りるまで誰も乗ってこなかった。 しかしエレベーターから出た瞬間、背後で咳払いが聞こえた。 えっ、誰? 咄嗟に振り向くと、…

山老

ある大学の登山部メンバーが夏の箱根を回ったときの話。 登山というよりはハイキングコースを辿るのが主な行程で、天候にも恵まれ、順調に予定を消化していった。 道中、箱根の旧街道に入った時のことだという。 鬱蒼とした杉林に挟まれた道を進んだ一行は、…

2週間ほど前に我が家の飼い犬が死にました。享年19歳(推定)。近所の飼い犬の中でも一番の長老でした。 日課の散歩から帰って来てから程なくして断続的な痙攣が始まり、それが2時間ほど続いた末に静かに息を引き取りました。それほど長時間苦しむことも…

土顔

Kさんが小学五年生の時の話。 春休みに親戚の家に遊びに行った。 親戚の家にはKさんと歳がそれほど離れていない従姉妹が二人いて、彼女たちと一緒に外に遊びに出かけた。 田舎で、家の周りには田んぼや畑が広がっており、Kさんたちは網を持ってメダカをすく…

毛玉

Hさんが小学生の娘を行きつけの美容室に連れて行った時のこと。 娘の散髪が終わって会計をしたところ、娘が床にしゃがみこんでなにかしている。 手元をのぞき込むと、娘は切った自分の髪を丸めて遊んでいた。 ――そんなことしたら、手が毛だらけになるでしょ…

赤いスーツ

Oさんが友人と山歩きをした時の話。 気の合う仲間同士で隣県のハイキングコースをたどったのだが、ふたつほど峠を越えたところで辺りに少し霧がかかってきた。 少し心配だったが、大して濃い霧でもなかったので、見通しが悪くなるほどではない。 問題ないと…

日常系

『名探偵コナン』が日常系ではないかという解釈。 本来大事件であるはずの殺人事件がコナンの近辺では毎週のように起こっている。あの作品世界において、乱発される殺人事件はもはや特別な事態ではありえないのではないか? 十年以上前にテレビ番組で有栖川…

ひったくりの腕

ある人が夕方に外出した時の話。 夕食を食べに行こうと街中を一人で歩いていると、その数メートル前方にも一人の女性が同じくらいの速度で同じ方向に歩いていた。 なんとなくその後ろ姿を見ながら歩いていたところ、突然横からその女性のバッグを掴んで引っ…

来ないでくれ

Yさんという女性に、以前付き合っていた男性から電話がかかってきた。 付き合っていた当時は結婚も考えていたが、男性の浮気がきっかけでひどい別れ方をして、それっきり彼とは会っていなかった。 「俺の職場に来るなんて、どういうつもりなんだ!」 男性は…

道案内

Kさんが学生時代の友人の家に遊びに行く約束をした。 以前にも一度訪ねたことがあるので道はわかるつもりだったが、途中で道に迷ってしまった。 その頃はスマートフォンを持っていなかったので地図を検索することもできない。 とりあえず携帯電話で友人に連…

もう一人のメンバー

Hさんは大学生のとき、ダンスサークルに所属していた。 サークルと言っても元々あったものではなく、Hさんが友人たちと立ち上げたものである。 結成以後は新規メンバーも募集していなかったので、メンバーもごく親しい友人たちのみで構成されていた。 練習は…