2007-06-01から1ヶ月間の記事一覧

二十一/ 湖を望む

約三十年前の話。ある山間の森にリゾートホテルが建っていた。五階建てのこのホテルには、時々起こる現象があった。五階の宿泊客が、客室から目の前に広がる大きな湖を見るのである。――ホテルの入り口から反対側にあるから来た時は気付かなかったのか。そう…

二十/ 向かいの屋上

Mさんの通っていた高校の校舎は上から見るとHの形をしていて、片方の縦画に各クラスが、もう一方の縦画に理科室や音楽室といった特別教室があった。 ある日の午後のことである。午後の授業は昼食の後なのでどうしても眠気に襲われ、集中力が途切れがちにな…

「ヒップアタック」を連呼すると段々「ひっぱたく」に聞こえてきます。 するというとミセス……「ひっぱたく」という語は「ヒップアタック」という語の転訛して動詞化したものである、と……そうかね? さて、そうしますと「ひっぱたく」という動作は尻をもって…

十九/ 自転車の籠

Sさんの家の近くにはひとつ高校があって、Sさんの家の前の道も通学路になっている。ある日の夕方ふと見ると高校生が三人、自転車を並べて帰ってゆく。そのうちの一台の前の籠に、白髪の老婆がひとり立っている。老婆は籠に足を突っ込んで直立したまま、前…

十八/ お化け飛行機

Kさんの郷里には地域の人から「お化け飛行機」と呼ばれるものが現れるという。 Kさんの実家から山ひとつ越えたところに空港があるので、飛んでゆく飛行機が一日中見える。お化け飛行機はときおり、その中に紛れ込んでいるという。 Kさんが一番最近お化け…

十七/ 古いトンネル

Fさんが学生の時の話。 ある日、暇に任せて友達と夜中に旧○○トンネルに行ってみようということになった。旧○○トンネルというのは近辺では心霊スポットとしてよく知られていた。しかし当日になって、Fさんだけが急用で行けなくなってしまった。しばしの後、…

十六/ 窓の内

Mさんの職場のビルには、ひとつだけ段ボールが張り付けられた窓がある。といっても壊れているわけではない。ガラスはちゃんと嵌っているし、開閉も難はない。 Mさんの会社がこのビルに入ったのは三年ほど前のことだった。引越し作業が終わり、仕事を始める…

うたかた

浮かんでは消えてゆく泡は、一体どこへ消えてゆくのだろうか。 地の果てには海があり、海の果ては滝となって絶え間なく落ちている。水が落ちた先には泡が立つ。海が落ちた先であるから、その泡の量たるやすさまじいものだ。あまりに泡の量が多いので、泡のか…

http://q.hatena.ne.jp/1180863895BlogのデザインがGothicなんで私の中で萌えobjectOさんはゴスロリ少女なんですが、ゴスロリは四肢欠損すると途端に背徳的になる気がします。これが萌えでしょうか。

十五/ 網戸の外

Tさんの家は山中にあるので、夏になると周囲に虫が沢山発生する。日中にはヤブ蚊と蝉くらいしか気にしないが、日没後明かりをつけると種類を問わず様々な虫が寄ってくる。明かりが漏れる窓には小さい羽虫以外に、セミや甲虫の類が毎晩のようにぶつかってく…