2006-08-01から1ヶ月間の記事一覧

第5番 7つめのあなたへ

音は廊下まで響いていた。 いつもと同じように、先生は音楽室でピアノを弾いていた。 あの頃と変わらず、はっとするほどその姿は綺麗だった。 「先生、お久しぶりです」 聞こえていないのか、演奏の手は止まらない。 「今日はお別れを言いに来ました」 音は…

第三回萌理賞

http://q.hatena.ne.jp/1156507229 それがしが萌理賞の佳作……もったいのうござりまする。 正直「今回も華麗に参加賞いただきだぜ!」って思ってました。 期日とお題の予告があったのでイラスト参加や新参加者が増えるかなと思っていたんですがそうでもありま…

三/ コンコン

Iさんがひとりで車に乗って千葉県の国道を走っていたときのことである。 コンコン。 後部ガラスを何かが叩くような音がした。何かが風で飛んできてぶつかったのだろうか。そう考えた。 コンコン。 数分後また音がした。さっきと同じような音である。今日は…

二/ 木蓮

私の家の庭には大きな木蓮があって、毎年春に白い花を沢山咲かせる。ある年の一月、祖父が亡くなった。その年の春には、木蓮の花はまったく咲かなかった。 それを見て父がぽつりと言った。「人死にのあった家では花が咲かないって言うからなぁ……」翌年からは…

吉村昭『羆嵐』

萌えとか何とか言っても、大自然の前には無力です。 この作品に出てくる羆は果てしなく危険。 ひょっとすると北海道の人にとってはそんなの当たり前なのかもしれませんが。 まずこの羆、人をホイホイ襲う。 熊のほうも人が恐ろしい、という話を聞いたことが…

人はむなしく、業績こそすべて

ふた月ほど前に書店で本当に何気なく吉村昭『羆嵐』を購入して、程なく読了して「ヒグマヤバイ。超ヤバイ」などと思っていたところ、先月末に吉村昭氏が亡くなったという。ああなんだこのタイミングはと思っていたところ、今度は宇山日出臣氏が没したという…

実は怪談大好きなんですが

http://guideline.livedoor.biz/archives/50636361.html http://www.youtube.com/watch?v=zMLLdA99K0g 携帯電話のカメラ撮影音が“撮ったのかよ”と“エーアイアイ”の両方に聞こえる、という話。 私はどう聞いても撮ったのかよとしか聞こえないのが何やら悔しい…

一/ ぐるぐる

Sさんという男性は3年間交際した恋人に遂に結婚を申し込んだ。 恋人自身は結婚に乗り気だったが、しかし承諾するには両親に伺いを立てねばいけないという。 そういうわけで2人で彼女の実家を泊りがけで訪れたときの話である。 娘の結婚の決定権を握るよう…

8月4日追記

第二回萌理賞応募作品に有志の方より10ポイント頂きました。ありがとうございます。 この作品を好きになってくれた人がいるのは慮外の幸せです。

第二回萌理賞が終わったので

切なくて儚いお話。言葉遣いも綺麗で格調高いんですが、最後の一行が大問題で、これは無い方が良かったのではないでしょうか。私的には今までの過程を一行で押し潰す感じの結末という印象です。そうした賛否はともかく、少なくとも、最後の一行があるかない…