友人の葬儀

高校時代の友人が事故で亡くなり、Nさんは葬儀に駆けつけた。
郷里の千葉から都内の大学に進学し、そのまま東京で就職したNさんは高校を卒業してからその友人には一度も会っていなかったのだが、高校生の頃には親しい同級生のひとりだった。
まさか卒業式が今生の別れになるとは……、と呆然とした心持ちで葬儀に加わっていたが、次第にひとつ気になることが出てきた。
参列者の中にいくつも同じ顔があるのだ。
故人の親戚が集まるのだから似た顔がいくつもあるというのは普通に考えられることだが、Nさんが見たところ全く同じ顔にしか見えないおじさんが六、七人いる。似ているどころか同一人物にしか見えない。
葬儀だからみな喪服姿なのはいいとしても、顔まですっかり同じで、頬のホクロの位置すら一致している。
六つ子だか七つ子だかの兄弟なのだろうか、とNさんは考えたが、今はどうでもいいかと思い直して葬儀の方に意識を戻した。
読経を聞きながら友人との記憶を思い返していると、焼香の順番がやってきた。
前に進み、焼香して手を合わせ、遺影に視線を戻して、そこではっとした。
遺影の顔が変わっている。
友人の写真ではなく、初老の男の顔だ。頬にホクロがある。
――参列者の中にいくつもあった顔だ。
Nさんは咄嗟に振り向いて参列者の顔を見回した。しかし先程までいたはずのあの男たちはどこにもいない。
遺影に向き直ると友人の顔に戻っていた。
それから出棺までホクロの男たちはいなくなったままだったという。