怪談を煽ってみる

怪談は、

  • ほどほどの長さ(短編が多い・短編が適している)
  • 読む時と場所を選ばない(あらゆる状況それぞれに適した怪談がある)

といった点からケータイ小説に実に適したジャンルだと思うので、みんな携帯端末向けに怪談を書けばいいと思いました。単に私が読みたいというのもある。
もしくはブログに怪談を書いて携帯電話から読めばいいじゃない。
「ポケット怪談」とかなんとか名づけて流行らせればいいじゃない。
怪談にはちょっと季節が遅くなってしまったけど季節は移ろいゆくうたかただからあはれを感じればいいじゃない。
そのあはれを怪談に詠み込めばいいじゃない。
百物語にもどんどん投稿すればいいじゃない。
はてなに陰風を吹かせればいいじゃない。


余談ですが、本来話芸は落語の他に歴史物やら怪談やらというものもあったのに、近来は噺家といえば落語家みたいになってしまって、怪談を芸として語るのは稲川淳二などの限られた人だけになってしまっているので、話芸としての怪談も復興するとより面白くなるんじゃないのかなと思いました。
ニコニコ動画You Tubeに怪談を発表するとか面白いんじゃないかな。
流行りの初音ミクとやらに怪談を語らせるとか。

四十九/ 引っ張る

Tさんが背中まであった長い髪をばっさり切った。

「最近ね、部屋の中で子供が騒ぐの。それだけじゃなくて、面白がってるのか、時々髪を引っ張られたりしたの。鬱陶しいから短くしちゃった。
そうしたら声もしなくなって。多分、髪形が変わったから誰だかわからなくなったんだと思うのよね」
一人暮らしのTさんはそう語った。

五十/ 増えた先生

Mさんが高校生の時の話。
午後の授業中についつい睡魔に負けて、数分間机に突っ伏した。
気がついてみるとどうやら居眠りしていたのは僅かな間だけだったようで、授業はほとんど進んでいなかった。
しかし、変わっていることがあった。
なぜか先生が二人いる。
別の先生が加わったわけではない。
授業をしていたのは中年の男性教師だったが、その先生が二人に増えている。
二人いる先生は、一人が普通に授業をして、もう一人は黒板側のドアの前で静かに立っている。
立っているほうの先生は動かないのかと思えば、ツカツカと黒板に寄って話の終わった部分の板書を消したりしている。
どちらかが本当の先生なのか。どちらも本当の先生なのか。さっぱりわからない。
Mさんはまだ目が覚めていないのかと自分を疑った。
しかし意識ははっきりしているし、感覚もいつも通りだ。
何度も見直してみるが、やはり同じ先生が二人だ。
教室を見渡してみれば、他に怪訝な顔をしているクラスメートはいないようだ。
訳がわからぬまま、その授業は終わった。
二人の先生は揃って教室を出て行った。
Mさんは、クラスメートに事の次第を聞いてみる気にはどうしてもなれなかったらしい。
同じ先生の次の授業では、先生は一人に戻っていた。
二度と先生が増えることはなかったという。

「この話、人に教えるのは初めてです」
とMさんは言った。